経営企画室便り

そっか~ブランディングだったんだ~!

理美容サービス業に関係している方はもちろん、B to Cビジネス関連の方におススメの書籍を二冊ご紹介します。

まずはこれ、
『なぜ、日本人はモノを買わないのか?』(野村総合研究所)

野村総研さんが行っている1万人の時系列データをまとめたもので、現代の消費者が劇的に変化している様子が、データを裏付けとして説得力のある形で述べられています。

その中に、調査対象者の70%が商品やサービスを選ぶ際、情報が多すぎると回答しているという調査結果があります。
選択肢が多すぎると、消費者は消費自体をやめる傾向があるというのもよく知られているところです。
これに、私もよく使わせてもらっている総務省のデータ(消費情報量/流通情報量=0.0038%)をあわせると…
消費者は「もう結構です、お引き取り下さい」状態であることがよりはっきりします。
そんな状況下、以前は有効とされていた「ウチのウリはこれです、強みはこれです」アプローチは、やはり、効果があまり見込めないだけでなく、ときには危険とさえなりうるケースもあると言えそうですね。

また、消費者がブランドに求めることの変化にも触れられています。
それによると、現代の消費者がブランドに求めているのは、品質保証とテイストとのことです。
理美容サービス業界ではその性格上、ブランディングという言葉はよく使われているようですが、どうも、イメージ(orステイタス度)アップ、認知度アップという意味で使われてきた、というより現在もその傾向があると感じられますが、そのスタンスは既に消費社会とのズレが生じている可能性が高いということでしょうから、自社・自店のブランディングのあり方の再点検は必要と言えそうです。

そのブランディングという点で「なるほどな~」という感覚を抱いたのがこの書籍。
『エクスペリエンス・ドリブン・マーケティング』(著者:浅岡崇史 氏)

その中で、ブランドが提供する差別化付加価値の変遷が語られています。
それによると、出自保証→プロダクト価値→イメージ価値→ブランド体験価値→共創価値?と変わっているとのことで、共創価値はブランド体験価値の一部と考えられるので、現代のブランディングにおいてポイントとなるのは、ブランド体験価値とのことです。
本文を読むと、ブランドならではの“らしさ・ならでは・テイスト”を軸として、マーケティングはもちろん、事業経営そのものをその軸に統合させていくことの大切さが語られているようです。

この二冊であらためて認識できたことは…

「そっか~、私のご提供業務の主部分は、実はブランディングをご提案していることなんだ~」ということです。
私の業務は、理美容サービス業を主対象としたお店ビジネスという横軸の中で、創業に関連する業務から経営改善計画の策定まで多岐にわたっていますが、そのほとんどの業務において主となっているのが、「このお店ならではの・新たな・お客様にとっての価値=ハッピーを明確化し、それを軸に全ての事業活動を統合しましょう」というご提案とそのお手伝い、まさにこの2冊で言うところのブランディングのようです。

ブランディングというと、デザイナーさんとかアーティストさんとかのイメージが私の中でも強いのですが、私は、自分で言うのもなんですが、オシャレでもないし、むしろダサダサで、自分ではおよそブランドとは無縁だと思っていました。
ブランドの方が、私に寄ってきたようです(笑)。

であるなら、これからは、より確信をもって言うことにしましょう。
ブランドとは、事業の中心となるべきものであって、企画・製造・販売等の事業を構成する各要素、ビジネスモデルの上位に位置するものであって、その強化は、経営上、最優先かつ最重要課題であると。。。

では!

このところ、美容室業界に関して入ってくるお話、確かに質的に違う

またまた間があいてしまいました。

仕事柄、それなりに美容室・理容室・エステ等業界の状況に関する情報は耳に入ってくるのですが…
詳細は省きますが、特に美容室業界のそれは、今年に入って確かに質的に変化しているように思われます。
背景にある構造的変化の影響が加速度的に出ているように…

特に、消費社会の変化とのミスマッチ・新卒美容師の激減は業界自体の存亡にもつながりかねない環境の激変であることは事実で、たくさんの方がそれぞれの立場で、危機感を覚えられ、動きをなさっているようです。

いろいろな観方はあるでしょうが、それらは、オーバーストア云々レベルの話ではなくもっと構造的なもの、そして、従来とはことなりもはや、チラシ・キャッチコピー等の集客策をどうするということのみで対応ができないレベルのものという感触もあります。

その中でつらつらと思うこと…

美容室は、サービス業の中では、比較的店舗への投資額が大きく、しかも、その多くを金融機関からの借入に依存せざるをえないという現実、何やかやと言いながらも、全体的には業界として安定していたとも言えるこれまでは問題になることは多くはなかったかもしれませんが、今進行している環境の変化を考えると、どうも今後はそういうわけにはいきそうもなく…しかも、その方向に加速度的に…

反面、業態の性格上、いきなり売り上げがなくなるということはあまりなく、実際はジワジワと影響が出てくるであろうことから、対応が後手になる恐れは決して否定できず…

リスケを金融機関に相談するにしても、後手後手の状態ではなかなかに困難が伴いますので、早め早めの相談が不可欠と思うのですが、どうも、美容室の場合、表面化が遅れているのでは?という危惧も、個人的には抱いています。
債務の大きさからいうと、中小企業再生協議会の案件となる事例は少なく、いわゆる認定支援機関を中心とした経営改善計画策定支援の範疇に入るケースが圧倒的多数と思われますが、その現況からすると、認定支援機関も、美容室業界に対しては正直、なかなか対応できていないのではないかという気がします。

これは、私も含めた認定支援機関側の問題もあるでしょうが、事業者さん側の方の問題もあるのかなと…。

確かに他人に相談しづらいことだし、ましてや華やかな美容業界の方にしてみればなおのこととは思うのですが、だからこそ、早め早めの対応をなさっていただきたいものと、このところ、特に強く感じています。

私が言うのもなんですが…
まずは、認定支援機関たる顧問会計事務所の役割は、益々重要性を増してくることでしょう。
この分野に関して、きちんと対応できる会計事務所さんが顧問となっておられるかどうかによって大きな差が出てくる、そんな時代なんだろうなと感じています。

私としても、そんな会計事務所さんと協働させていただく機会を増やしていく必要があるんだろうな~と感じる今日この頃です。

自分の強みは(一旦)忘れましょう…特に創業の場合

「あれ?教科書や創業塾で言っていることと違うけど?」

と思われた方は、少なくないと思います。
以前より、何度か、よく言われている「創業にあたっての常識」に私は強い違和感を感じていることを、他の諸先輩方・ご同輩方にもはばかることなく唱えていますが(笑)、今回は、もう少し踏み込んで。

最も強い違和感を抱いているのは、事業orストアコンセプトの組立のあり方。
中でも、“何を”の質的違い。

ほとんどの教科書では商品・サービスとしていることが多いのに対し、私は、お客様にとっての、“ならでは”の“新たな”価値としてとらえています。
教科書的には「それはメリットじゃないの?メリットもちゃんと考えますよ」となりやすいかと思うのですが、メリットとはだいぶ違う感覚、むしろ、「お客様の、お客様自身すら気づいていないハッピーシーン」です。

当然、最も求められるのは、その“ならでは”の“新たな”ハッピーシーンの創造力です。
言い換えると、未来を描く能力とも言えるでしょうか。
その後、そのハッピーシーンを実現するために、どんな工夫や商品・サービスが必要であって、そのために必要なリソースはこれとこれで、そのうち、自分が有しているリソースはこれとこれで、それ以外はどうするというプロセスになります。

ところが、現在の自分のリソースから積み上げていくプロセスだと…
その業界で優秀であればあるほど、そのカテゴリーでの発想に限定される恐れが高くなります。
自分のリソースという部分からは、なかなか“新たな”は出てきづらい。。。
特に創業を考える方の場合、普通にしていても、自分のリソース発でビジネスを組み立てようとする傾向は非常に強く、その中で、教科書でも同様のプロセスをすすめてしまうと、その傾向が更に強化される恐れがあるのではないかと危惧されます。
結果…よくあるような、立派なその業界らしいお店が出来上がる恐れも高くなることでしょう。
それで、創業後一番苦労なさるのは、創業なさったご本人です。

こう考えると、実は重要なポイントは、自分の強みを探すことより、まずは、それを一旦忘れるぐらいの意識で、お客様の(未だ実現していない)素敵なハッピーシーンに気づくことであり、創業にあたって最も学ばなくてはいけないのは、未来を創造するプロセスではないかなと、私は思います。

お上が推進する開業率上昇のための各施策は、単に自営業者を増やすだけでなく、新たな価値を創造を期待してのものだと思うので…。

つよみと顧客価値を混同しないようにご注意くださいませ

よく”強み”という言葉を耳にされる方は多いと思います。
「強みを明確にして、伸ばしていきましょう」 とか、
「強みをしっかり伝えましょう」といった具合に…

強みを明確にし認識することが大切なことは、私も全く異論はありませんが、それを明示したり伝えることの業績向上効果は、少なくともBtoCビジネスでは以前ほど効果は見込めない、というか、あまり期待できないと思っています。

何度も申し上げているとおり、お客様の”買う”という行動を誘因するのは、お客様にとってのハッピー像、すなわち、顧客価値であって、強みやウリはお客様にとって、直接的には関係のないものです。
強みやウリは顧客価値を形成するリソースとしての位置づけであり、したがって、いくら強みやウリがすごくても、それによって形成される価値が、お客様の頭の中で価値として認識されないと、お客様にとっては存在しないに等しいという悲しいことになってしまう恐れも十分あるわけです。
いくらすごいリソースがそのお店にあったとしても、理美容室・リラクゼーションサロンの「癒しの空間です」や、飲食店の「こだわりの食材を使った云々」等は、お客様の頭の中では、もはや価値としては認識され難い時代、というか、何も語っていないに等しいとされる時代です。いくら、お店側がそれを価値だとしても、お客様の頭の中で価値として認識されなければ、価値とはならない、結果として、それを形成するリソースも存在しないに等しいという、とても悲しいことにすらなってしまいます。

こんなことを言うと、またまた諸先輩方・ご同輩方のご不興を買う恐れがあるのですが、強みを明らかにすることを業績向上の柱とする強みアプローチは、今、見直しが迫られていると思います。

強み(orウリ)アプローチから顧客価値創造アプローチへの転換、今、各事業者さんはもちろんのこと、支援機関・支援者にとって重要な課題になっている気がします。

最大のポイントは…画が浮かぶかです

いけませんね~、1ヶ月に2回ペースの更新になってしまっています。。。

お客様に買っていただくポイント、星の数ほどいらっしゃるマーケティングやプロモーション専門家の方々をさしおいて、単なる経営企画室の私なんぞがあれこれいうのもおこがましいですが…
しかも、毎度おんなじ内容ですが、下記と思っています。

1.お客様にとっての、ならではの新たな価値が
2.簡単に(できるだけ瞬時に、少なくとも、「え?それってどういうこと?」というレベルで)
3.聴き手の頭の中に画で浮かぶか

と思っています。
結果として…「画が浮かぶか」、これが最大のチェックポイントかなと思います。

「画?あなたは、よく物語を使っているようだけど、あれって、画じゃなく文字でしょ?」
と今思われた方、きっといらっしゃると思います。
結論から申し上げて、物語は文字ではなく、画です。
聴き手の頭の中のスクリーンに画を映しているのです。
動画と言っていい、しかも、物理的動画より、強力な動画。

文字は確かに読まれません。
「当店はこんなウリがありますよ」、「こんな特徴がありますよ」
これらは文字です。受け手が読みたいという状態になっていて、はじめて読まれる情報です。

 

「一枚の写真は、100語に勝る。 しかし頭のなかでつくられたひとつのイメージは、100枚 の写真に勝る」
by ロバート・コリエ

まさに、まさにです。。。

では。。。

この“価値”を忘れないで

おはようございます。

益々更新の間があいて…いけませんね。。。

先ほど、朝のNHKニュースで、新潟の某生活用品メーカーさんの、商品開発に関するエピソードが紹介されていました。
それを見ながら、これは、とてもいい教材だな~と感じました。
業績が落ち込んでいた時、主婦社員が日常で「ちょっと不便」と感じていることを解決する商品を提案、大ヒットとなったのを機に、主婦の開発チームをつくり、その後、次々とヒット商品を世に送り出しているというものでした。

その中で、「手の感覚でつかめるトング」の紹介があったのですが、このあたりは特に興味深かったです。

おそらく、ご覧になられている方によって、いろんな見方がされていたと思います。
一般的なものの見方は、

「日常生活にはまだまだヒット商品のタネが眠っていて、それにきちんと対応すれば日本の製造業の技術をもってすればまだまだやれる」
「そのタネを見つけるには、主婦の発想が大いに役立つ」

的なものでしょうし、ニュースの表のテーマでもあると思うのですが、このニュースで最も注目すべき点は、商品開発のバックストーリーをきちんと語っているという点と、私は感じました。

主婦チームが商品開発の企画に携わるようになったきっかけから、手感覚のトングのアイデアに至り、様々な困難に遭遇しつつも乗り越え、そして、ようやく完成に至りハッピーな生活が訪れ、未来はもっとハッピー。

はい、ストーリーの「山・谷・山」、あるいは「三幕構成」そのものですね。
おそらく、ご覧になられていた方で、このトングに、機能以上の魅力を感じた方は多いと思います。
特に、主婦の方々で、共感しまくりの方はとても多かったのではと…。

これは、明らかに、「お客様にとっての価値」ですが、トングというモノを見過ぎていると、それが価値であることに、なかなか気付けません。つくる側は特に、どうしてもモノを見がちになりますので…。
気づかないので、語ることもなく、その価値は、消費者に届かないということになります。
よしんば語ったとしても、今度は流通側がそれをきちんと価値と認めていなければ、これまた消費者には届きません。
結果、「品質・納期・価格」の価値論議しか、残らないということが、往々にしておきているということは事実だと思います。

実にもったいないことですね。。。

尚、同様なことは、サービス業でも頻発していますので、念のため。
では。

『繁盛店になるための魔法のクエスチョン』シートを使って、お金をかけずに…

しつこいようですが、「ならではの、あらたな、お客様にとっての価値」で店づくりも、提供メニューも、そしてプロモーションも串刺しして構成するというのは、今、お店商売の場合、とても大切なことと確信しています。

で、その顧客価値(CVP)を整理しまとめていくツールとして、私は『繁盛店になるための魔法のクエスチョン』シートを使っています。
なんかたいそうなツールの様に思えますが、まあ、ごく基本的なものでして…。

そのシートを使って「ならではの、あらたな、お客様にとっての価値」をまとめられ、そのシートの内容をほぼそのまま某検索サイトに反映なさり、既にネット上に公開されている事例を一件ご紹介します。

こちら、豊中に今年の春オープンの理容室『SuFaY’s』(スファイス)さんです。

元々、実力的には素晴らしいお店で、数か月前からこのサイトにはアップしておられたのですが、先日、その内容を顧客価値(CVP)中心型に書き換えられました。したがって、新たな投資はなしです。もちろん、サービス内容もそのままです。
変更なさったのは「店舗情報」と「イチオシ」ページです。

『SuFaY’s』さんのCVPは、「当店でのカットをきっかけに、カッコイイが習慣となり、そして人生が変わる」で、それをワンセンテンスとしてまとめたコンセプトワードが、

「エブリデイ、あなたはカッコイイ!」

です。
また、従来型の床屋さんとのポジショニングの違いを、

「理容の伝統文化×オシャレ感性=New Age Barbar」

というカテゴリー設定で表現なさいました。

で、実際に“人生が変わった”実例をストーリーテリングを使い表現した上で、その価値を実現する具体的手段をエビデンスとして、「イチオシ」ページに列挙されています。

全体のシナリオが読み取れると思います。

お聞きしたところでは、既に「へ~!」という反応も出ているご様子です。

理容・美容だけでなく、他業態のお店でも参考にしていただける事例ではないかと思いましたので、ご本人のご許可をいただいた上で、ご紹介させていただきました。

みなさんのお店でも、「顧客価値」をキュッとさせて、お金をさほどかけず効果をあげる手段がないか、一度ご確認なさることをおススメします。

創業促進補助金(6/30締め分)採択発表

おはようございます。

先週金曜日、発表がありました。
私が認定支援機関をつとめさせていただいている6件のうち、以下の5件をご採択いただきました。

<兵庫県>
1.株式会社クロスローズ小山眞司様…タカラヅカにとっぷり浸れる♪タカラヅカ・コンセプトカフェ事業の実施
<大阪府>
2.株式会社ブライトハウス村田哲夫様…いざ転勤-社宅探しならお任せを!事業用物件特化型不動産事業の実施
3.Dukes小林正明様…旬の魚と野菜でカラダが楽しい!自然派鉄板焼BAR&GRILL事業の実施
4.ARAKAWA荒川誠様…「商品は人なり!」常識を覆す経営で地域NO.1を実現する警備事業の実施
5.野藤崇之様…現法社長暦10年の実績!海外展開マネジメントパートナー事業の実施

ご採択となられました皆さま、おめでとうございました。
残念ながら選に漏れた方も、事業内容からしたら採択案件には決してひけをとらないレベルのもの、おそらく、たまたま当補助金の要件にあいづらかったか、30.8%という厳しい採択率故のこと、今後の大繁盛を心の底よりお祈りしております。

関係者の皆々様、ありがとうございました。

他にも、数多くのご相談をいただきましたが、私一人という物理的問題、その他の事情で、認定支援機関としてのお手伝いをご辞退せざるをえない案件も多くありました。この場をお借りしてお詫び申し上げます。

上記各タイトルにあるとおり、私は、できるだけタイトルの中に、その事業の「ならではの、あらたな顧客価値」を盛り込むよう、おススメしています。

私は、この「創業補助金」に関しては昨年ver.第1回-2次から毎回、なんらかの形でお手伝いをさせていただいてきました。その結果として、確かにその数は30件(窓口相談的な口頭助言レベルは除く-ご採択は23件)と数的には個人の事務所としてはそれなりの数にはなりましたが、1件目の案件より、補助金申請のお手伝い自体を業務としたつもりはなく、あくまでも創業なさる、あるいは創業なさって間もない方のパートナーとして、「使える制度」のひとつとしてお手伝いしているつもりです。
ということで、せっかく計画づくりをなさるなら、補助金以外の実務面でも(使おうと思えば)使えるものとしたいという気持ちがあります。

タイトルに、できるだけ「ならではの、あらたな顧客価値」をできるだけ盛り込むようにおススメしているのも、その一環です。
そのタイトルを、ほぼそのまま検索サイト等WEB上のツールや、フライヤーで使ってもいいレベルに近いレベルがベストと考えています。事実、そのタイトル名の「~事業の実施」の~部分をそのまま某検索サイトのTOPで使ったところ、反応率が上がったという事例も、過去お聞きしています(しかも、不採択案件で)。

計画を組み立てるにあたっては、これまで何度もご説明してきましたとおり、このタイトル名に盛り込んだ顧客価値を中心にすえ、それをブレークダウンしていくプロセスで組み上げる様にしています。
おそらく、そのシナリオだては、書籍や創業スクール等で示されている「創業計画の書き方」とは異なる面が多々あるかとは思いますが、私は、実務的にその方が妥当と判断してそうしております。
どちらかというと…、創業計画に関する教科書やセミナーよりは、ソーシャルデザインの分野に近いかもしれません。
(もちろん、一般的なシナリオだても有効でしょうし、あくまでも、私的実務観点から判断してのことですので、ご了解のほどを)

平成27年度予算の概算要求の内容(経済産業省分)をみると、どうやら来年も「創業促進補助金」は実施されそうですね。
ただし、資料によると予算枠は25億円。昨年が200億円、今年が40億円でしたので、より厳しくなるのか、あるいは、対象が絞られるのか…。
いずれにしろ、創業なさる方は、あくまでも補助金はプラスアルファとしてとらえ、しっかりと事業プランを組み立てられますよう、そして、私もそういった方々のパートナーとして微力をつくしていきたいと、あらためて思っています。

それでは。

売り込んじゃダメ~!

創業後間もなくの方からお寄せいただくご相談案件のほとんどは、これまで何度もお伝えしてきたとおり、

「なぜ、お客様はあなたのお店を利用しなくてはならないのですか?」

が「ならではの、新たな、お客様にとっての価値」として、端的にまとめられておらず、不明瞭・曖昧・ありふれとなっているというケースですが、もうひとつ、時々目につくケースがあります。
それは…

「懸命に売ろうとするあまり、負のスパイラルにはまりこんでいる」

ケースです。

誰しも、創業すると、あるいは新規事業をスタートすると、新店をオープンすると、一日も早く業績をあげなくちゃと、懸命になります。
当然でしょう。中には、寝る間も惜しんで、キャンペーンや広告宣伝や営業活動に没頭なさる方も、少なくないでしょう。
そこに、落とし穴があります。

「売りたい!」わけですから、ともすると、意識は「いかに売り込むか」になりがちです。
・一生懸命、商品・サービスの特徴や、長所を強調して訴求する。
・キャンペーンを多発(時には大幅割引も)
・まとまった資金を投下して、何万枚、何十万枚の折込を繰り返す。
これらは悪いというわけではありませんが、今の消費社会では、「売り込み」と認識される恐れが高く、十分な注意が必要でしょう。
今の時代、「売り込まれたくない、だまされたくない、説得されたくない」という意識は非常に強い
消費者は、お店側から発せられる情報から、敏感にこの「売り込み意識」を感じ取ります。
感じ取ると…お店側に対する「意図の信頼」に?マークがつきます
結果、頑張ってアピールすればするほど、お客様は近づくどころか、遠ざかっていく恐れが高まります。
で、またまた頑張ってアピールする…益々遠ざかって…負のスパイラルです。

確かに、まだ見ぬ将来のお客様には、自店の価値はお伝えする必要があります。
ただ、ここで、少なからぬ方が、あせって、商品の良さ・特徴等の理屈を強調してしまいます。強調するのはまだいいとしても、「売りたい」がために、強調し過ぎだと、逆効果になりかねません。

負のスパイラルに陥らないようにするためには、あるいは、脱出するためには、私は方法はひとつしかないと思っています。
それは、「売ることをやめる」こと。正確に言うと、「商品を売り込もうとしない」ことです。
なすべきは、「自店が本来ご提供すべき、お客様のハッピーのために、最優先とすべきことはなに?」の原点に立ち返ることです。
そのビジネスを通じて、「実現したかったハッピーな世の中のシーンを今一度明確にし、そのためには何をする?」を落ち着いて考え直すことです。
そうすることで…商品・サービスを売ることは、その手段のひとつにしか過ぎず、その他にもたくさんなすべきこと、できることがあることに気づくと思います。一見、目先の売上に直結するとは到底思えないことも多いでしょう。そういったことこそが、ポイントです。
その中から、お客様の笑顔がイメージできることに取り組んでみる…、どんな小さなことでもいい。

その打算の裏付けのない真心は、商品を売ることよりもダイレクトにお客様に伝わることが往々にしてあります。
その積み重ねは、あなたとお客様の間に、共感の架け橋を徐々に築いていくことでしょう。
その共感の架け橋、そして、そこから広がる共感の輪しか、あなたを負のスパイラルから救うものはないでしょう。

「それは理想論です!今売れないと、お店を継続できません!」
そうおっしゃるかもしれません。お気持ちはよくわかります。
私だって、過去、何度も同じ思いをしてきましたから…
詳細は省きますが、私がお聞きする多くの方より、深刻度は高かったことも幾度もあります。
その結果、至ったことは…原点に帰れでした。
「理想論です!今売れないと!」という意識でやることは、ほとんどがお客さんの刈り取りになります。
刈り取るお客さんがなくなったら、じゃ、次の畑へよろしく、広範囲に宣伝をしたり、立地を嘆いたり、時には、来店なさらない方をも恨んでもみたり…。行きつく先は、虚無感と自己嫌悪…。
「売れないのは商品・サービスが悪いから?じゃ、もっと売れる商品・サービスは?」と模索したりもしました。
全く効果がなかったわけではありませんが…こういった短期的な対症療法的施策は、近年、特に効果がなくなってきていると確信せざるをえません。

時間がかかるからこそ…早くから、自店のビジネスモデルに、お客様との共感の架け橋を築く仕組みを、具体的に入れておく必要があるでしょう。たとえ小さなことばかりでもいい、難しく考える必要はなく、ただ、「こうしたらお客様が笑顔になる?」と、お客様の笑顔を思い浮かべながら。
刈り取るんじゃなく、畑を耕して芽を育てていくしか、道はない!そう覚悟できるか、このことは、近年、創業にあたって非常に重要な要素となっていると言ってよいでしょう。

営業のあり方が、根本的に変わってしまっている…
「いい商品を、どうやって宣伝して売っていくか」では、対応できない時代になってしまっているのです。
特に、これまで販売の世界で、営業力に少なからぬ自信をお持ちの方の創業では、十分気を付けた方がいい点かなとも思います。

それでは。

お店商売をなさる方が、絶対におさえておかなくてはいけない消費社会の3つの変化

過去にも触れたことがあったかとは思いますが、あらためて…

世の中の変化って色々あるとは思います。
少子化・高齢化・人口減少・女性の活用気運etc…
それらの多くは、新聞等でも盛んに取り上げられ、私なんぞよりはるかに詳しい事業者さんも多くいらっしゃり、私も時折ご講義いただいたりするのですが…

とってもと~っても大切なのに、認識されていらっしゃる方が極めて少ない「消費社会における3つの変化」があります。
これをきちんと押さえているorいないでは、ご商売のあり方が、場合によっては180度違ってくる可能性も高いので、あらためて、簡単に列挙しておきます。

1.あらゆるモノ・サービスがコモディティ化している(ありふれたものになっている)
 今の世の中、ないものはないと言っても過言ではありません。「もう新しいモノ・サービスなんぞなくても結構です」が消費者の基本スタンスと考えた方が妥当でしょう。

2.消費情報の氾濫
 総務省関連機関の調査結果から計算すると、世の中に流通している消費関連の情報のうち、消費者が、「これは消費者が消費に関する情報である」と知覚している比率は、0.0038%だそうです。話を単純化するために、チラシ換算で言うと、10万枚のうち3.8枚しかチラシだと認識されていないということです。「自分に有益な情報」と認識している割合ではありません、3.8枚しか、そもそもチラシだと思われていないということです。まあ、世の中の消費に関する情報が全てチラシということはありえない話なので、実際にチラシの「チラシだと思われている」比率は、そこまでは低くはないでしょうが、少なくとも、その比率は、近年、加速度的に低下していることだけは間違いのないところでしょう。
 「もう広告宣伝は結構です、聞きたくも見たくもありません!」が消費者の基本スタンスと考えた方が妥当でしょう。

3.価値と感じる対象が大きく変化している
 一言で言うと、「モノ(理美容サービス業で言うところの施術もモノです)よりココロ」、「ベネフィットよりハッピー」です。ただし、このことは、モノやベネフィットがどうでもいいということではなく、大切な前提条件として、ポジションが移行しているということに留意する必要はあります。その上で、「ああいいわ~♪」というココロのふるえとかワクワク感とかジンワリ感が重視されていますよということととらえていいかと思います。

 

 以上の3つを簡潔に表現すると、消費者は「売り込みはご勘弁!もう必要なモノなんて特にないです、でも、ハッピーを感じたいんです」という状態でしょう。

 世の中の消費者がこう変わっているのですから…お店での商売のあり方も、それにフィットしたものである必要があるのですが…そもそも、この変化に気づいていないと、従来のあり方のまま、結果として、ギャップが生じ拡大していく一方となりかねません。
 このギャップの解消が、多くのお店で最重要の、しかも、緊急の課題となっていると、日々の業務を通じて痛感しています。

 キーワードは、

「ならではの、新たな、お客様にとっての価値をビジネスの中心に!」
「その価値で串刺し・徹底!」
「共感・感動・自分ごとで伝える!」

と、私は考えています。

少なくとも…「ウチの商品・サービスの良さを、たくさんの方に知ってもらうためにどうするか」が、実務上の最重要課題である時代は、とうに過ぎ去っていると考えていいと思います(もちろん、全然重要ではないというわけではありませんが)。

では、また。。。