やっぱりなかなか使えないです(泣)、小規模事業者活性化補助金
現在募集中の小規模事業者活性化補助金。
やっぱり、私としては、使える事業者は現実的に極めて少ない(ほとんどない?)というのが実感です。
単に、要項をみて、あるいは、事務局、ないしは、中小企業庁さんとお電話でやりとりしただけで申し上げているのではなく…
実際に、金融機関さんや知人のご紹介で何件か(理美容サービス業以外の)案件について、ご相談がありましたが、その結果を含めての感想です。
この補助金、一見、対象者は多そうに見えます。
新事業が「特定市場型」か「地域特化型」かの問題も、さほどハードルが高いとは思えません。
ところが、実際に、新事業に必要な経費を洗い出し、補助対象経費となるかどうか照合、検討していったら…ほとんどがダメ。。。
これまでご相談いただいた案件は、全て、事業としては対象となっても、補助対象経費の狭さから、使えないということになりました。
エステ、リラクゼーションサロン等含めた理美容サービス業だけでなく、飲食業、卸売業、食品販売業、ITビジネスのご相談で、ここまでそういう結果となっています。
根本的に間違えていけないことは、この補助金は、新事業に対する補助金ではなく、新商品・サービスの試作・開発、販路拡大に対する補助金であり、販売は対象外であるということです。この点をまず勘違いなさっている方が多いようです。
あと…試作・開発がそもそも何をさすかも…。
飲食・小売・サービス業では、新事業とは、業態開発であることが実態です。例えば、未だスタバの様なカフェの業態が存在しなかった時代においては、その、スタバの様な業態の開発は明らかに、新事業となるわけで、そこにおける開発費とは、そのコンセプトの構築およびそれにそった店づくり、実際には、店舗内外装費が主たる開発費となります。
ところが、この小規模事業者活性化補助金に限らず、現在の補助金体系ではどうやら、”開発”とは、こういった業態開発は想定していないようで、そのカフェで出す、カフェラテの開発が、新商品・サービスの開発に相当するようで、原材料のコーヒー豆の費用は補助対象費だけど、内外装費は補助対象外ですとなっているようです。
カフェラテ試作・開発のコーヒー豆代、しかも、販売用原材料は対象外ですから、試作・開発のみの豆代…いったい、いくらでしょうか?(笑)
IT関連事業でよくある事例としては…、ITの世界の場合、開発に必要な経費の多くは人件費、あるいは、その開発を外部委託した際の委託費でしょう。ところが、その両方とも、補助金額の2分の1以下という規定があります。一方で、申請時の計画上では、補助金希望額は100万以上(補助率2/3ですので、補助対象経費総額では最低150万円以上)という規定があり(結果としてそれ以下になることは仕方ないとしても申請時は)、そうなると、人件費・委託費以外の、①謝金②旅費③機械装置等費④借損料⑤原材料費⑥展示会・商談会費⑦広報費⑧産業財産権等取得費合計で、75万以上かかる事業ということになります。
そして…これら、それぞれの項目毎に、縛りがかけられています。例えば、借損料。店舗家賃は、借損料としては認められませんので、この点でも、ほとんどのお店商売が対象外となってしまいます。
この状態で…人件費・委託費以外で、75万円以上使うビジネスって、はたしてどれだけあるでしょうか?中堅企業ならいざしらず、小規模企業ですよ。
当局、および、利用検討者さんも、広報費が入っていることに期待なさっているケースも少なからずあるようですが、これがまた曲者でして。
例えば、ウェブサイト。対象となるのは、あくまでも、新商品・サービスの広報サイトであって、そこで販売行為となるものは、対象外となっています。課金機能はもちろんのこと、販売予約機能も「販売行為である」として対象外との回答を、中小企業庁担当課さんから頂戴しています。広報だけのサイトって…一体いくらかかります?(笑)
飲食・理美容サービス業の場合、経費のほとんどが人件費と家賃で、その両方とも縛りがかかっている、ないしは、対象外ですので、そもそもこの補助金は使えるケースはほとんどなかろうというのは容易に予想できますが、それでも、小規模製造業、ないしは、小規模製造小売業の場合は、対象となるケースもそこそこあるのかなと思っていましたが、どうも、それも簡単にはいかないようです。
というのは、このケースの場合、少なからずのケースが、「試作・開発」を外部委託するというのが実態であろうだからです。
となると…例によって、2分の1以下という縛りが影響してきます。
予算は30億…2回目の募集もあるようですが、このままでは、お飾りの補助金となってしまう恐れも考えられそうですので、1回目の応募件数によっては、要項を変更し、このあまりの補助対象経費の狭さを改善してくる可能性は考えられますが、本筋的なところは変更はできないでしょうから、下手をすると、30億のほとんどが残ってしまう恐れもあります。
中小企業庁としてはなんとかその状態を阻みたいでしょうし、また、申請時では申請者も認定支援機関も、補助対象経費を勘違いして(現在でも多いのではないかと)申請してくるケースは多くあることも考えられることから、採択件数自体はそれなりの数になる可能性はないではないですが、さて、実際に事業を実施して、支給申請時の確定検査の際に、対象外経費とされ、支給されなかったというケースが続出することも、十分考えられます。現在のところ、どの程度の厳しさで検査がされるかどうかはわかりませんが、そもそも、検査が甘いことを期待して申請するというのも本末転倒、あってはならないことですし、少なくとも、認定支援機関たる私としては、あってはならないことと考えています。ましてや、補助金受給のための抜け道的な方策を考えるがごときことは…。
聞くところによると…この補助金を利用して、自社の商品・サービスの購入を提案している事業者もあるとかないとか。
そのこと自体は特段の問題はないとは思いますが、そのススメにしたがって購入したはいいけど、最終的には補助金対象とならず支給されなかったというケースも十分ありうりそうですので、あくまでも、「(補助金があろうがなかろうが)その商品・サービスが本当に必要かどうか」に基づいて、自己責任のもと、判断をなさってくださいませ。
いろんな認定支援機関の方がこの補助金に関してブログ等で述べられたりセミナーをなさったりしているようで、その中には、「汎用性が広い」とか、「対象となるケースは多そう」というご意見もあるようですが…
その「対象となる、多いケース」とは、実際にどんなケースなのか、事業なのか、きっと、私が気づいていないケースが多々あることをご存知なのでしょうから、その方々のセミナー等で具体的実例で聞いてみたいなとも思ったりするのですが…、さすがにそれは、先様が嫌がられるかなと思い、遠慮しています(笑)。
あくまでも、私個人の意見として、こういった補助金や各種施策を設計・企画なさる方々に強く申し上げたいです。
「お願いだから…飲食・小売・サービス業の現実に即した、使える制度をつくって!」
と。そして、
「お願いだから…モノありきの考え方はやめて!研究開発・製造業だけを企業として考えるようなことはやめて!」
と…。
では!