フレームワークの功罪-小規模事業者持続化補助金にも関連して
各地で、持続化補助金に関連した経営計画セミナーがたくさん開催されているようです。
とてもいいことですね♪
それにつれて、この補助金を、「販売促進のための補助金」とする等の、少々ずれた観点の方は減ってきたようです。
かわって出てきているのが、フレームワークあてはめ型観点かな~と、そして、「これはこれで、ちょっとウ~ン」と感じたりしています。
確かに、持続化補助金の書類フォーマットや審査項目を見ると、フレームワークにそっているように見えると思います。
特に、SWOT分析なるもの。
おそらく、多くの「経営計画セミナー」で講師をお努めになられているのは、診断士の諸先輩方かと思うのですが、診断士である私が言うのもなんなのですが、診断士の業界では、どうもこのSWOT分析が必須の、時には万能道具のようにとらえられている傾向も、多少はあるのかなと感じています。
なかには、まるで方程式や機械のように、強み・弱み・機会・脅威の4つの入力欄に記入し、クロス分析というボタンを押せば、「あ~ら不思議、進むべき道があらわれます」的に思われている方も、ひょっとしたらいらっしゃるのかな~と危惧するほどです。
以前にも述べたことがありますが、SWOT分析で、新たなモノ・コトが創造されることは、まずありません。
SWOT分析のみならず、他のフレームワークの多くもそうです。
フレームワークは、創造ツールではなく、整理ツールであり、現実に使われるシーンは、創造された後のアイデアの金融機関等への説明や企画書内での記述、検証のシーンがほとんどでしょう。
これはこれで大切なシーンであり、したがって、フレームワークを知っておくことは大切だと思いますし、使える様にしておくことはとてもいいことだと思いますが、整理ツールを、創造が必要なシーンにあてはめるのは避けなくてはいけないことです。
小規模事業者にとって特に必要なのは、整理や説明ではなく、知恵です。
知恵は、フレームワークの中にはありません。PCの中にもありません。お客様との接点にあることがほとんどかと思います。
そもそも、フレームワークのほとんどは、大企業の世界から生まれてきたという経緯があると思われ、小規模事業にとって必ずしも効果的であるとは、実務的にもなかなか考えづらいところです。
あのフォーマットを最初に見たときは、私も、「あ、SWOT?」と感じました。
でも、小規模事業者関連の昨今の動きを私なりに見るにつれ、そんな単純なものではない、もっと奥の深いものであると感じる様になりました。
あの経営計画書で本当に求められているのは、SWOTで整理することではないでしょう。クロス分析をすることでもないでしょう。
求められているのは…
唯一無二と言っていい真のUSPをリソースとして、いかに新たな、ならではの顧客価値を創造するかの知恵
ではないかと、私は感じています。強みを並べるのが重要なのではなく、新たな顧客価値を創造する知恵です。そもそも、強みなんぞ、お客さんにとってはなんの興味もないこと、興味のあるのは、「自分にとっての価値」です。
そして、その経営計画づくりをお手伝いする立場に立つとしたら、その役割は、文章作りではなく(付随して担うことはあっても)、フレームワークを駆使することでもなく、その事業者さんの真のUSPを引っ張り出し、現場にある新たな顧客価値のヒントを明らかにして、時には事業者さんと一緒に現場視点にたって浮かび上がらせ、キュッと明確な価値として組み上げていくスタンスなのでしょう。
実に奥が深いフォーマットと、私には思えます。
PS.経営計画セミナーでは、SWOT分析の活用を紹介なさっている講師の方は多いとは思いますが、上記のことは、それ自体を否定しているわけではないこと、念のため、補足させていただきます。
不特定多数の受講者に対して経営計画をに関する話をする際は、確かにSWOT分析は知識としては紹介して然るべきものですし、私が講師の立場であったとしても、やはりそうするでしょう。
問題は、その単なるツールに対する過信は、思考が浅くなる(あるいはワンパターン化する)等の弊害を生み出す恐れがあるということです。どうぞ、ご理解のほどを…。