事業計画書フォーマットは使えない?
おはようございます。
ちょっと、更新の間があいてしまいました。
前回のお題は、私たち、理美容サービス業にとって(というより、その他のサービス業・飲食・小売・ITetc.小規模製造業以外にとって)、と~っても使いづらい、むしろ、事実上ほとんど“使えない”ことがとても多い「小規模事業者活性化補助金」に関してでした。
その続きとしての、“使えないシリーズ”のひとつではないですが…。
私が現役の理美容サービスベンチャー企業の常勤取締役経営企画室長だった10年間、ずっと抱いていた感覚が、この、
「事業計画書フォーマットは使いづらい、特に理美容サービス業ではあまり使えない」
というものでした。
もちろん、事業計画自体はとても大切なもので、事業を行っていくにあたっては必要不可欠なものとの認識にはかわりありませんが、問題は、その策定プロセスであり、それを書面に落とし込む際に一般的によく使われる様なフォーマットであったり、関連フレームワークであったりします。正確に言うと、そのフォーマットの構成のあり方や、フレームワークの使い道です。
一般的には、事業(創業)計画フォーマットは、多少の違いはあっても、だいたい、下記の様な構成になっていることが多いと言えましょう。わかりやすくするため、創業計画書としてご説明します。
1.創業者について
①プロフィール
②創業の動機
2.外部環境分析&内部環境分析
①機会 ②脅威
③強み ④弱み
3.商品・サービス(orビジネスモデル)
①誰に(ターゲット) ②何を(どんな商品・サービスを)
4.戦略(どのように)
(1)基本戦略
①商品戦略(差別性・優位性) ②価格戦略 ③チャネル戦略 ④プロモーション戦略
(2)個別戦略
①組織・人事戦略 ②店舗開発戦略…etc…
5.損益計画
6.資金計画
てな感じでしょうか。その策定にあたっては、SWOT分析、4P、3Cや、時には、BSCといったフレームワークを使ったりします。最も頻度が高いのはSWOTで2の「外部環境分析・内部環境分析」に該当します。
このフォーマットが…、理美容サービス業の場合、非常に使いづらい!
これだと、創業者をはじめ、事業当事者の意識は、まず、「商品(モノ)・サービス」あるいは「ビジネスモデル」に向きます。
後は、その商品・サービスやビジネスモデルを、「いかに売っていきますか?」という流れで、考えが進んでいくことになりがちです。
まず、この検討の流れ自体が、現場感とは大きな違和感がありました。
その違和感の正体は…
「何を売っているのか?」
の違いにあると、今では確信しています。
多くのサービス業の場合(飲食・小売等お店商売のほとんどはそうでしょうが)、ほとんどの発想の起源は、「お客様の喜ぶ声・顔」だったり、お店の現場や生活の一シーンの中でふと気付いた「お客様の、消費者の、充たされない思い」であったりします。
すなわち、お客様にご提供する価値は、モノ・サービスそのものではなく、多分に感情的・情緒的なものであり、それを実現するために最も重要なのは、「お客様に喜んでいただきたい」という、サービス提供側の、これまた情緒的な「感性力」であることが、非常に多いというのが実態です。
一般的なよく見かける事業計画フォーマットは、この点の考察が非常に浅くなりがちで、そもそも、そういった「感情・情緒・感性」力をきちんと表現する欄自体がないに等しい…。
かろうじて「創業の動機」欄にちょっと書けたりするのですが、そこで求められているものは、背景のロジカルな説明だったりで、とても十分とは言えません。
それと…、以前も述べたことですが、こういった「感情・情緒・感性力」は、現実的にはSWOT分析からは生まれません。事業のタネも、事業者の想いや気づきから、生まれることがほとんどです。SWOT分析は、その事業のタネから生まれた事業アイデアを検証する段階になってはじめて活用できるものというのが、現場での実態かと思います。
もちろん、金融機関やベンチャーキャピタルからの資金調達や、ビジネスプランコンテストや補助金等は、この一般的な事業計画書フォーマットに準じて形式が定められていて、最終的にはこの形にまとめる必要がありますし、私も実に様々な提出先にむけての事業計画を書き続けてきたのですが、事業計画をまとめるはじめの段階では、こういった事業計画フォーマットや、SWOTのようなフレームワークは一旦横に置いて、というより頭の中から消して、スタートさせた方が、よりその方らしい、とんがったビジネスプラン、形式的ではない、本当の意味で使えるビジネスプランができあがると、確信しています。
では、それらを一旦横において、何をなすべきか…
それは、以下の3点について、しっかり時間をかけて、自分の心の奥底にあるものと対話しながら組み立てていくことです。
1.Value(どんな価値を、お客様に、社会に提供しますか?)
2.Customer(その価値でハッピーになる人は、価値と感じる人はどんな人ですか?)
3.Arrangement(その価値をどうやって実現しますか?)
です。
この3つ、“何を”、“誰に”、“どのように”の形になっていますが、その順番も大切です。
“何を”、“誰に”、“どのように”であって、“誰に”、“何を”、“どのように”ではありません。
あくまでも“何を”が先です。まかり間違っても、“どのように”を先にしてはいけません。“どのように”を先にすると、使えるビジネスプランになりません。ボワ~っとした、総花的なものになってしまうことが多々あります。
“何を”が先が、現実に即した組立のあり方です。
「SWOT分析は、一旦忘れましょう」
なんてことを言うと…他の診断士さんあたりが、とても怪訝そうな顔をされることがよくありますが…(笑)
それでは!