これが繁盛店になるためのシナリオです
繁盛店になるシナリオは、もちろんひとつではなく、いろいろあることでしょう。
山頂に至る道が、色々あるように…。
その中で、私が5年間のコンサルティング活動と、10年間のサービス業系ベンチャー企業の経営企画担当役員としての現場経験、そして、その後からここまでに至るまでの2年間の診断士・社外経営企画室としての経験からして、数ある道の中でも、私なりに、「この道じゃないかと…」というものが、体系化されてきました。
ひとつひとつのパーツは、これまで述べてきたことばかりなのですが、この機会に、整理しておきたいなと思って、今、これを書いています。
フェイズ1:「お客様は、なぜ、当店を利用しなくてはならないのですか?=当店ならではの、新たな、お客様にとっての価値(ハッピー)は何?」をつきつめること。
「繁盛店になるための魔法のクエスチョン」Q1ですね。Q1をつきつめれば、同時にQ2の「その価値でハッピーになる方」像も明確になってきます。これを一番最初に考える必要があるのは、現代の消費社会は、「あらゆるものがあるコモディティ化社会であること」、「情報過多により、ほとんどの消費情報がそもそも情報として認識されていないこと=むしろ、消費者は受け付けない傾向あり」、「消費者自体が何が欲しいか明確でない」等の状態であるからです。
こんな状態の中で、自店をご利用いただくためには、そもそも、商品・サービス提供者側が、「お客様が利用しなくてはならない理由」を明確に認識していないと、お客様はもっとわからない=利用しないからです。
このフェイズでのポイントは、だいたい以下のようなところです。
①価値は(メリット・ベネフィットではなく)ハッピーで考えること
お客様が買っているのは、その商品・サービス自体ではなく、それによって手に入れることができるハッピーです。目に見えやすい、メリット・ベネフィットではなく、それらも含めたハッピーであると考えること、ここが、大きなポイントです。
尚、「お客様が買っているのは商品・サービスである」との観点は、それ以前の問題、特にお店商売の場合、致命傷というか、どん詰まり状態に陥りやすい危険な観点と、私は考えています。
②ホンモノであること=生きざまがあらわれていますか?
今のお客様は、お店側の本気度に対して、非常に敏感です。「こんなハッピーがありますよ~」というお店の言葉が、思い付きや嘘とわかった場合、3倍返し(?)のしっぺ返しとなる恐れがあります。
人は、その人のことを、「過去どういうことを、どうやってやってきたか、そして今、どれだけ本気でやっているか」で判断します。ここに至るまでに、成功もあれば失敗もあったと思います。うれしかったこと、悲しかったこと、ゆずれなかったこと等、色々な思いや出来事があって、今のお店になっているはずです。それが感じ取れるか、言っていることと整合性がとれているか、お客様は敏感に感じ取ります。
このことから、私はまず、事業者さんから、ここに至るまでの経緯を、ザックバランに、かつ、かなり細かいところまでお聞かせいただいています。4時間~6時間、メモを取ることもほとんどせず、ただひたすらお話をおうかがいします。それをICレコーダーに録音させていただき、その後あらためて聞きながら、時には(結構な割合ですが)テープ起こしをして、改めて、その事業者さんの想いをできるだけ“感じる”ようにしています。
フェイズ2:お客様にとってのハッピー価値を実現する手段として、商品・サービスを含め、ビジネスモデルを組み立てること
実現すべき価値が先、商品・サービスはそれを実現するための手段のひとつ、ビジネスモデル全体の中での一要因であるととらえること、この観点にたてるかどうかは、業種業態にかかわらず、繁盛店になれるかどうかの分かれ目と言っていいと思っています。
価値は、口で言っているだけでは実現できません。あたりまえです。でも、その価値を実現するために、とんがらせる必要があるのは、必ずしも販売商品・サービスだけではありません。その商品・サービスの提供の仕方かもしれませんし、お客様との関係性からかもしれませんし、お値段かもしれません。そして、そのどれをどれだけとんがらせるか、そして、それに必要なリソースをどう手配するかを設計する必要があります。言ってみれば、「魔法のクエスチョン」シートのQ3に相当しますが、実務的には、ビジネスモデルキャンバスを使って組み立てることもあります。フレームワークは好まない私ですが、このビジネスモデルキャンバスというフレームワークは、現代の消費社会にとてもマッチした優れものだと感じています。
フェイズ1がどちらかというと、人の感情をメインとしたエモーショナルなものが中心となるのに対して、このフェイズ2は、ロジカル中心の設計となります。
ここまでが、言わば、ビジネスの設計部分となります。創業の方の場合は、創業計画の核部分、既存店の方の場合は、矯正すべき骨格の背骨部分・基本設計になります。
フェイズ3:基本設計の内容を、現実のものとする。
この部分は、どちらかというと、事業者さんに、その道のプロの実務者として、持てる腕を思う存分発揮していただく段階です。いわば、オペレーションの部分です。理・美容室なら理・美容師さんとしての腕、飲食店なら調理・接客のプロとしての腕、エステサロンならエステティシャンとしての腕、そして、クリンリネスや素材の選定・調達・管理等、お店を運営するにあたってのオペレーション部分です。
オペレーション部分において、特に、商品・サービスの質・レベル等運営に直接的なものに関して、私の様な社外スタッフを活用しなくてはならないようですと、正直、繁盛店を狙う以前の問題なのかなと思いますので(雇用管理・資金管理・業績管理的なものは除く-社外に依頼した方が得策なことは多々あります)、ここでは省略します。
商品・サービスの質・レベルが、そもそもそれなりの水準以上に達していることは、繁盛店を考えるにあたっての前提条件であり、実際、私のもとには、この段階におけるご相談は皆無に近い状態です。
考えてみれば、あたりまえですよね。私に「美容師やエステティシャンとしての腕や商品の内容のこと」についてのアドバイスを期待するようでは…プロとしての鼎の軽重を問われても仕方がないのかなと思いますので。
フェイズ4:伝わるように伝える設計と実行
せっかくのお店の価値も伝わるように伝えないと、価値になりません。そもそも、価値はお店側にあるのではなく、お客様側にあるもの、お客様が価値と感じないと、価値じゃないですから…。
ポイントは、以下の2点と考えています。
①徹底して伝える
明らかになった「お客様にとっての価値」を端的に表現したメッセージ=ストアコンセプトに、お客様とのすべての接点を統一化し、繰り返し繰り返し表現することです。
その際、従来の広告宣伝の考えの中で、時代にあっていないものは頭の中から一旦排除いただいた方がいいと思います。具体的には…「認知度さえ上がれば、売れる」という考えにこだわることは、危険と考えています。
「認知度さえ上がれば…」にこだわっていると、「ドーンとキャンペーンを宣伝して集客すれば」という考えが生じやすいようです。「ドーンとキャンペーンを宣伝して」は、大企業にまかせておいた方がいいでしょう。
「ドーンとキャンペーンを宣伝して集客」しても、キャンペーンが終われば元の木阿弥になりやすく、しかも、経費負担も馬鹿にならないことが多く、私達中小・小規模事業者にとって、得策とは考えづらいと思います。
「明確なお客様像に対して、繰り返しコチョコチョ」の方が、経験的にも、どうやら私たちにとっては得策のようです。
②伝わることは…「共感・感動・自分事」
お客様にとっての価値・ストアコンセプトを表現しようとする時、多くの方がおかす失敗は、それをいきなり理屈で説明しようとすることです。お客様が理屈を聞きたいと思う時は、それ以前に、「ココロが動かされていること」という前提条件が整っている必要が多いことが、現実的には圧倒的多数でしょう。厄介なのは、その「ココロが動いている状態」というのが、無意識状態の感情レベルのことであるが故に目に見えない、わかりづらいということで、目に見えやすい・頭で理解しやすい「理屈」を優先して述べてしまいがちになるということです。例えば、「当店には、こうこうこういうお客様にとってのならではの価値があります」とのメッセージの後に、「そのこころは」という流れから、「商品・サービスのUSPやウリや特徴」をいきなり説明してしまいがちになるというようなことです。
説明は、説得と解釈される確率が高いです。現代の消費者の多くは、説得されて買いたくはないのです。共感して買いたいのです、感動して買いたいのです、自分事として買いたいのです。だから、理屈を語る前に、きちんと、”共感・感動・自分事”をお伝えした方が、お互いにとってハッピーなのです。
私としては、そのひとつの表現方法として、「感動ストーリーテリング」を使うことが多くあります。
まずココロを動かして聞いていただける状態になってから、理屈を聞いていただく…すべてがそうあるべきとまでは思いませんが、それが原則と考えています。感情と論理…いずれもが大切で、その融合に留意することが、とても大切と考えています。
この2点に留意しながら、ホームページはどうする?ポスティングは?インストアマーケティングは?というように、具体的アクションの設計に移っていきます。
ただし、その実行に関しては、フェイズ3同様、オペレーションの一環となりますので、事業者さんにお願いしています。
以上が、ここのところの私の業務の主流となっている進め方です。
これに、財務(財務分析とかじゃないですよ、早い話が資金調達・返済等資金繰りにつながるところ)のお仕事も時には附随してという感じになっています。
こうやって考えると…私がやっていることって、繁盛店になるための、基本的な地図づくりのお手伝いなのかな~と感じます。
ひょっとしたら、その地図は、一般的な地図とは、平面地図vs3D地図ぐらいの、見え方の違いはあるのかもとも感じています。
長文になって恐縮です。
もし、ほんの少しでもご参考にしていただけるところがあれば、幸いです。