売り込んじゃダメ~!
創業後間もなくの方からお寄せいただくご相談案件のほとんどは、これまで何度もお伝えしてきたとおり、
「なぜ、お客様はあなたのお店を利用しなくてはならないのですか?」
が「ならではの、新たな、お客様にとっての価値」として、端的にまとめられておらず、不明瞭・曖昧・ありふれとなっているというケースですが、もうひとつ、時々目につくケースがあります。
それは…
「懸命に売ろうとするあまり、負のスパイラルにはまりこんでいる」
ケースです。
誰しも、創業すると、あるいは新規事業をスタートすると、新店をオープンすると、一日も早く業績をあげなくちゃと、懸命になります。
当然でしょう。中には、寝る間も惜しんで、キャンペーンや広告宣伝や営業活動に没頭なさる方も、少なくないでしょう。
そこに、落とし穴があります。
「売りたい!」わけですから、ともすると、意識は「いかに売り込むか」になりがちです。
・一生懸命、商品・サービスの特徴や、長所を強調して訴求する。
・キャンペーンを多発(時には大幅割引も)
・まとまった資金を投下して、何万枚、何十万枚の折込を繰り返す。
これらは悪いというわけではありませんが、今の消費社会では、「売り込み」と認識される恐れが高く、十分な注意が必要でしょう。
今の時代、「売り込まれたくない、だまされたくない、説得されたくない」という意識は非常に強い…
消費者は、お店側から発せられる情報から、敏感にこの「売り込み意識」を感じ取ります。
感じ取ると…お店側に対する「意図の信頼」に?マークがつきます。
結果、頑張ってアピールすればするほど、お客様は近づくどころか、遠ざかっていく恐れが高まります。
で、またまた頑張ってアピールする…益々遠ざかって…負のスパイラルです。
確かに、まだ見ぬ将来のお客様には、自店の価値はお伝えする必要があります。
ただ、ここで、少なからぬ方が、あせって、商品の良さ・特徴等の理屈を強調してしまいます。強調するのはまだいいとしても、「売りたい」がために、強調し過ぎだと、逆効果になりかねません。
負のスパイラルに陥らないようにするためには、あるいは、脱出するためには、私は方法はひとつしかないと思っています。
それは、「売ることをやめる」こと。正確に言うと、「商品を売り込もうとしない」ことです。
なすべきは、「自店が本来ご提供すべき、お客様のハッピーのために、最優先とすべきことはなに?」の原点に立ち返ることです。
そのビジネスを通じて、「実現したかったハッピーな世の中のシーンを今一度明確にし、そのためには何をする?」を落ち着いて考え直すことです。
そうすることで…商品・サービスを売ることは、その手段のひとつにしか過ぎず、その他にもたくさんなすべきこと、できることがあることに気づくと思います。一見、目先の売上に直結するとは到底思えないことも多いでしょう。そういったことこそが、ポイントです。
その中から、お客様の笑顔がイメージできることに取り組んでみる…、どんな小さなことでもいい。
その打算の裏付けのない真心は、商品を売ることよりもダイレクトにお客様に伝わることが往々にしてあります。
その積み重ねは、あなたとお客様の間に、共感の架け橋を徐々に築いていくことでしょう。
その共感の架け橋、そして、そこから広がる共感の輪しか、あなたを負のスパイラルから救うものはないでしょう。
「それは理想論です!今売れないと、お店を継続できません!」
そうおっしゃるかもしれません。お気持ちはよくわかります。
私だって、過去、何度も同じ思いをしてきましたから…
詳細は省きますが、私がお聞きする多くの方より、深刻度は高かったことも幾度もあります。
その結果、至ったことは…原点に帰れでした。
「理想論です!今売れないと!」という意識でやることは、ほとんどがお客さんの刈り取りになります。
刈り取るお客さんがなくなったら、じゃ、次の畑へよろしく、広範囲に宣伝をしたり、立地を嘆いたり、時には、来店なさらない方をも恨んでもみたり…。行きつく先は、虚無感と自己嫌悪…。
「売れないのは商品・サービスが悪いから?じゃ、もっと売れる商品・サービスは?」と模索したりもしました。
全く効果がなかったわけではありませんが…こういった短期的な対症療法的施策は、近年、特に効果がなくなってきていると確信せざるをえません。
時間がかかるからこそ…早くから、自店のビジネスモデルに、お客様との共感の架け橋を築く仕組みを、具体的に入れておく必要があるでしょう。たとえ小さなことばかりでもいい、難しく考える必要はなく、ただ、「こうしたらお客様が笑顔になる?」と、お客様の笑顔を思い浮かべながら。
刈り取るんじゃなく、畑を耕して芽を育てていくしか、道はない!そう覚悟できるか、このことは、近年、創業にあたって非常に重要な要素となっていると言ってよいでしょう。
営業のあり方が、根本的に変わってしまっている…
「いい商品を、どうやって宣伝して売っていくか」では、対応できない時代になってしまっているのです。
特に、これまで販売の世界で、営業力に少なからぬ自信をお持ちの方の創業では、十分気を付けた方がいい点かなとも思います。
それでは。