金融庁からのお達し(金融円滑化法期限終了について)
今、巷では各支援機関等を通じて、下記の様な案内が広がっています。
要は、金融円滑化法の終了で、巷では、「その後どうなるの?いきなり元の返済額に戻されるの?そんなの無理!私の借入、サービサーに売却されるの?どうなるの?」という不安が高まっていることに対し、
「落ち着いてくださ~い!」
というところなんだと思います。
ただし、この案内の中で、見逃してはいけない点が2点あると思います。
1点は、「不良債権の定義は変わりません」のところ、特にカッコ内、「不良債権とならないための要件は恒久措置」という個所です。この案内にはその要件なるものは示されていませんが、大臣談話の本文には注釈として明示されています。それによりますと…、
(注)「経営改善計画が1年以内に策定できる見込みがある場合」や「5年以内(最 長10 年以内)に経営再建が達成される経営改善計画がある場合」は、不良債 権に該当しません。
とあります。なるほど、従来と変わりないですね。
ただ、問題となるのは、現在リスケしている企業、そして、現在はなんとかやりくりして返済しているけど、少し業績が下ぶれするとなかなか困難となりかねない、いわゆるリスケ予備軍企業の中で、きちんと経営改善計画が策定できている事業者は、はたしてどれだけあるのでしょうか?ということです。
私には、この金融庁からの案内は、
「今リスケしている企業はもちろんのこと、リスケ予備軍企業もしっかりとした経営改善計画を策定しなさいよ、じゃないと、知りませんよ、そもそも、やっていけないでしょ?」
と訴えている様に見えます。
もうひとつ見逃してはいけない個所は、
「金融機関に対して、借り手の経営課題に応じた最適な解決策を、借り手の立場に立って提案し、十分な時間をかけて実行支援するよう促します」
というところ。大臣談話本文では、「金融機関に対して」と「借り手の経営課題」の間に、「自らのコンサルティング機能を積 極的に発揮し」という文言が入っています。
各金融機関では、現在、今年春以降のこういった金融庁からの意向を受け、コンサルティング機能の強化を図っている様子で、それはとても喜ばしいところなのですが、はたして、金融機関が、経営改善コンサルティングにどれだけ本格的に取り組めるのか、疑問視する声も、正直なところ多いというのも周知の事実です。
大臣談話ではこの点にも配慮したのでしょうか、中小企業再生協議会の機能強化や専門家紹介等の相談機能の強化に言及されています。
その専門家がどういった人達を指すのかはわかりませんが、ひとつには、現在、順次認定中の、「経営革新等支援機関」があると思われます。この経営革新等支援機関がどういう位置づけで、具体的にどういう役割を果たすのかは現在のところ不透明なところが多いですが、いずれにしろ、何らかの形で前述の「経営改善計画」に関連してくる可能性が高いことは予測できます。
この経営革新等支援機関の認定要件は、客観的にみても税理士・公認会計士の、いわゆる会計事務所が、他の専門家と称される方々より認定されやすい内容となっており、事実、先日発表された第1次リストをみると、ほとんどが会計事務所となっていました。これは、現状、税務会計事務所が現実的には事業者が相談しやすいポジションにいることから、その会計事務所にたくさん認定機関になってもらって、事業者の経営改善に注力させたいという金融庁や中小企業庁の狙いからと、私は理解しています。
ただし、ここで求められる経営改善計画は、経費節約レベルではなく抜本的な収益改善策が求められますし、一般的によく見られるような「年度数値計画」レベルのものでもありませんので、多くの会計事務所さんにとっても、その点にしっかり踏み込んだ施策策定能力の向上が求められると言ってよいでしょう。それに耐えうることができない場合は、会計事務所のみならず、認定機関全てに言えることですが、「あまり役に立たない?」との評価がなされる恐れもありそうです。この面において能力が高く経験も豊富な事務所であれば問題はないのでしょうが、そうとは言い難い場合、「経営革新等支援機関を標榜したが故に、かえって業務に支障が」というケースもありうるでしょう。その点を危惧して、たとえ税理士さん・公認会計士さんが認定されやすい認定基準であったとしても、「本業の会計業務に集中」として、あえて申請しない会計事務所さんもあろうかと思います。それはそれで、その事務所なりの賢明な意思決定と思います。
理容室・美容室を含めた美容系サービス事業者にとっての影響ですが…
現在リスケ中の事業者はもちろんのことですが、それよりむしろ、
「多額の借入をしてお店をオープンしたはいいけど、なかなか数字が上がってこない…このままでは資金が底をつくかも」
「1店舗目はうまくいったので、その勢いで今度は多めの借入で少し大きな2店舗目、3店舗目をオープンしたものの…」
といったリスケ予備軍の方が心配です。数的には、正直、かなり多いのではないかと思います。
「いざリスケ」となった場合、今の流れからすると、なんらかの形で「経営革新等支援機関がかかわる必要がある」となりそうな感じですが、さて、認定された経営革新等支援機関の中で、理美容サービス業をメインとして活動しているところは、はたしてどれだけあるでしょうか…。
経営革新等支援機関である・ないにかかわらず、いわゆる士業という人で、美容系サービス業に業種特化(中心という意味)している方は、全国的にみてもさほど多くはないだろうというのが、私の実感です。
ちょっとした改善なら、別に美容系サービス業を中心とした方である必要はないでしょう。しかし、ここで言う経営改善計画は、ちょっとした改善では対応できないと思われます。また、「販促(プロモーション)は得意」というように、ある機能が得意であったとしても、財務・人事等経営に関する広範な能力がそれなりにないと、これまた経営改善計画は組めません。
となると、やはり、ある程度美容系サービス業を中心としている、少なくとも、労働集約型サービス業の経験が豊富な方が、経営革新等支援機関として、事業者と一緒に計画を組み立てていく…その方が、望ましいのではないか(必ずそうあるべきというわけではないですが)、そう思います。
このままでは、来年以降、理美容系サービス業の、膨大な数の事業者さんの叫びに、支援機関側がこたえられない、受けきれない、そういう事態が生じる恐れがあるのではないか…
そう感じています。
私自身、まだまだ未熟者ですが、そういった事態をほんの少しでも防ぐことができるよう、微力ながら全力を尽くしていきたいと考えています。
ということで…、近日中に、私自身も、経営革新等支援機関としての認定申請をする予定です。