経営企画室便り

中小企業経営力強化支援法、ならびに、経営革新等支援機関

本日、京都であった中小企業庁の中小企業政策についての説明会に参加してきました。メインは、やはり金融円滑化法の出口戦略の一環である中小企業経営力強化支援法、その中でも、同法に基づく認定機関「経営革新等支援機関」です。
 
経営革新等支援機関については、色々お考えがあるとは思いますが、少なくとも、公的支援制度に関係する機会が多い中小企業診断士の方は、基本的には必須と思います。今日の資料の中ではいくつか新規施策がありましたが(プラットフォーム事業、経営力強化資金)、既に10月から実施が決まっている経営力強化保証も含め、かかわるためには、経営革新等支援機関として認定されていることが前提となっていました。ということは、今後も出てくるであろう多くの同法関連の施策の多くも同様となることが予測できます。 すなわち、同法に基づく支援制度を使いたいと事業者さんが望む場合、いくらご支援なさっている診断士の方や民間コンサルタントの方が能力が高く実績があったとしても、経営革新等支援機関として認定されていないと、基本的には事業者さんは使えないということになりかねないということです。小規模事業者が圧倒的多数の美容サービス業界の事業者さんにとって、公的支援施策の活用は、経済負担という観点から見ても非常に有効(もっともっと使った方がいいと思います)、でも、さて、美容サービス業経営改善にかかわれる経営革新等支援機関がどれだけいらっしゃるでしょうか、正直危惧を感じます。
 
今回の認定制度は、主に、中小企業にかかわる外部専門家として圧倒的に数が多い税理士さん、すなわち、会計事務所を公的支援体系の輪に引き入れることを大きな目的のひとつとしていると思わざるをえないのですが、もともと公的支援体系になじみが深いとは言い難い(私にはそう見えます)会計事務所さんに、さて、どれだけの動機づけ効果があるかは、正直疑問に感じました
 
 最後に、美容サービス業事業者の方々に一言…。同法の動向は、今後、皆さんの経営にも大きな影響が出てくると思います。金融円滑化法のもと、リスケをしていようがいまいが、必ず影響は出てきます。既にその兆候は出ています。来年以降は、経営の在り方を根本的に見直す必要が出てくるであろうこと、そして、それは主に外圧により否応なく強いられるものであろうことは、ぜひ覚えておいてください。 早く気づけば気づくほど、他の事業者より一歩も二歩も前を行くことになるでしょう。美容サロン経営に関係の深いディーラーさん等関係事業者の皆さんにとっても、重要な動きであることも、お忘れなく。 詳細は、またの機会に…。

補足です

ストアコンセプトの前に…誤解が生じないようにしておかないといけませんね。 私は決して、言語以外の五感で感じる情報を軽視しているわけではないということはご理解ください(笑) むしろその反対で、今後はこれまでにも増して大切になると思っています。小冊子でもふれましたとおり、今後は、お店に対する(ポジティブな)感情が益々不可欠となってくるわけで、お客様が五感でお感じになる、「な~んとなくこのお店スキ!」という感情もその中のひとつであり、今後、お客様の行動判断のもととなる“認知”に大きな影響を与える感性情報でもあるからです。

ただ、現在の美容系サロンの状況を見ていると、業界特性でしょうか、その五感訴求こそが中心で、同じほど大切な「意味づけ・概念化」が少々弱いと感じざるをえないのです。「意味づけ・概念化」は、お客様の中におけるブランドの記憶にも大きな影響を与えます。「な~んとなく」は、記憶に残りづらいのですね…。

両方必要だということで、どうぞご理解くださいませ。

お客様は自分にとって意味ある情報しか知覚しない

昨日は、「ボワ~っとしたイメージだけの訴求」について、消費者の自己正当化の心理面からご説明しましたが、もっと基本的な「刺激→知覚→認知→反応」のプロセスモデルからも説明がつきます。 モノ・サービスの購買を、消費者の心理面から思いっきり単純化すると、「お店からの購買・利用呼びかけ=刺激」を受け、その「呼びかけを認識し=知覚」、それに応じて「購買する(反応)」というプロセスであると言えます。刺激には、言葉だけではなく、見た目・イメージも含め、五感に働きかける全てのものを含みます。 このプロセスからわかることは、刺激が知覚されないと、購買という反応がおきないということです。 でですね、ここが非常に大切なところなのですが、情報の知覚効果というか力は、言語化(概念化)された情報の方が強いということなのですね。 このことは、ちょっとした実験で「なるほど」と理解できます(よく使われる事例です)。
 
1.皆さんが今いらっしゃる部屋の中を見回し(1分間程度で十分かと)、青色のものがいくつあるか、確認してみてください。
2.その後、目をつぶって思いだしてください。
3.さて、次に黄色のものはいくつあったでしょう?何と何があったでしょう?
 
視覚情報の全てが知覚されているなら、回答できるはずですが、回答できる方はそうそういらっしゃらないのではないでしょうか?回答できるとしたら、予め黄色についてもたずねられるとわかっていたケースぐらいではないでしょうか。 黄色のものの情報も、感覚器官には間違いなく届いているはずなのです。色情報だけではなく、形状に関する情報等、視覚情報は全て。 ところが、脳は、それらの膨大な情報の中から、自分にとって意味のある情報しか知覚しないのです。 そして、その意味化の力を最も強めるのが、言語(概念)化なのです。
 
美容系サービス業の場合、ビジュアルイメージ力が長けた方が多い様に感じます。理容師さん、美容師さんにおいては、そもそも、その力がないと、商品・サービスそのもののレベルが問われかねないのではないかと。技術者として、クリエーターとして優秀であればあるほど、「こういうデザインでこうすれば」という様に、瞬時にあるべき姿を頭でイメージでき、それを、現実のヘアデザインとして具現化できるのではと思われます。その頭の中のイメージをお客様にお伝えするには、作品集とも言えるカタログ等でビジュアルに訴えるというのは適切だと思います。ただし、いかがですか?現実にはその場合でも、「お客様(あなた)の場合だと、こういったスタイルがいいのではないでしょうか?」的に、そのお客様にとってそのビジュアル情報が意味ありますよ、と意味化を言語で図っているケースは多くないですか?
同じことは、お店へのご来店を呼び掛ける時にも言えるのですね。ボワ~っとしたイメージ訴求だけでは、この意味化が弱いということですね。
 
さて、あなたのお店は、お客様にとって、意味化された情報がきちんと発信されているでしょうか? 次回(ひょっとしたらもっと後になるかも)は、この件に関連して、ストアorブランドコンセプト(カテゴリー)等についてふれてみたいと思います。

なぜボワ~っとしたイメージだけの訴求は好ましくないのか

小冊子第4章第二条の4で、「イメージで語りかけること自体が悪いというのではなく、そのイメージがボワ~っとしすぎている、あるいは、しっかりとしたメッセージが伝わってこないケースが問題」と書きました。サラッと書いたのですが、実はこの点の理解は実務上、とても重要と思います。 美容室をはじめ、美容サロンの多くは、ファサード・内装はとてもステキで、また、訴求として使っているヘアスタイルや施術の様子の画像などにも工夫を凝らしていらっしゃることが多い様です。これはこれで、正しいと思います。ただ、絶対に忘れてはいけないことがあります。それは、お客様は、購買・選択を自己正当化したいんだということです。「ボワ~」や「メッセージが伝わってこない」場合は、お客様は、この自己正当化がしづらいことになります。第1章で書きましたが、現在の美容系サービス業を取り巻く外部環境で、最も重要視すべき変化は、「コモディティ化」です。世の中にはあらゆるモノ・サービスが満ち溢れ、結果、ありふれたもの(コモディティ)となっています。この様な状況下において消費者は、自身の欲しいものすらわからない状態となっています。サービス提供者側は、そんな中で新たな価値を創造し(再発掘含め)、購買を働きかけていく必要があります。ある意味、衝動買い的購買の訴求が求められてきます。 その衝動買い的行動を、消費者の心理からモデル化すると、下記の様になります。

「刺激」→「衝動」→「葛藤」→(正当化できた場合)「購買」or(正当化できなかった場合)「非購買」

もちろん、現実はもっと複雑なのでしょうが、単純化すると、なるほどと感じます。 実例をあてはめてみましょう。例えば、こんな感じでしょうか?

「刺激」…感じのいいファサード・外から見える内装、ステキなヘアスタイル写真、自分の感性にあいそうなオシャレなスタッフetc 「衝動」…いい感じの美容室ね♪もうそろそろカットしたいと思ってたから、今度試しにこのお店を利用してみようかしら

ここまでは成功ですね♪問題はこの後…。

「葛藤」…でも、はじめてのお店だし、失敗したらどうしよう…ちょっと不安…。

で、お客様(見込客)は、「自己正当化」の情報を得ようとします。「なぜ私がこの初めての美容室を利用しなくちゃいけないのか」の情報です。 ところが、その適切な情報がお店側が発信していない、弱くてお客様に届かないなんてことになると、お客様はご自身の選択を正当化できず、「非購買」=「やっぱり、いつもの美容室にしておこう」となります。 この自己正当化を促す情報、価値情報が少ないお店が、非常に多い様に感じます。こういった「意味合い」の情報は、言語の方が伝わりやすいと言われています。もちろん、言語以外での伝達方法でもいいのでしょうが、大切なことは、「力強く伝わっているか」ということです。 発信するためには、そもそも、お店側が自分達の価値をきちんと整理し、理解しておく必要があります。だから…、「価値の洗い出し」が必要なんですね。洗い出しの前に、いきなり「チラシ、SNSetc」では、折角の投資が無駄になりかねないですよね。

経営者だけでなく、お店の皆で、「お客様に後悔させない情報を事前に」たくさん考え、それをきちんと発信していく、そうありたいものですね。

 

施術による「キレイ」、「気持ちいい」は“快”価値にあらず

小冊子ではそこまでふみこみませんでしたが…価値の洗い出しをする際、施術による「気持ちよさ」、「キレイ」、「可愛い」等の価値は、情緒的な「快」の価値ではなく、商品の便益と分類した方がいいでしょう。飲食で言うと、「美味しい」に相当します。そうでないと、なすべきことが浮かび上がってきません。施術により直接的にもたらされると一般的には理解されている「気持ちよさ」、「キレイ」、「可愛い」はあってあたりまえのもので、取引価値、すなわち、顧客満足軸の範疇である「適」価値であって、情緒的な「快」価値ではありません。 それと、施術による「気持ちよさ」、「キレイ」、「可愛い」は、そのままでは価値としては伝わりづらく、ひと工夫もふた工夫も必要です。 「キレイ」、「可愛い」についてはまだ視覚的訴求効果が使いやすいでしょうが、飲食の「美味しい」同様、「気持ちいい」は、「美味しい」や「気持ちいい」を生み出すプロセスを明らかにし、「なぜ美味しいか」、「なぜ気持ちいいか」等の背景を訴求する等の工夫が必要と理解しておいた方がいいでしょう。

大変生意気な言いようで恐縮なのですが…

生意気を言うようですが…私が業務をお受けする場合、その前提条件として大切にしたいことがあります。それは、「相互共感できるかどうか」ということです。 それは、私自身が先様に対して共感できない状態において、お互いにとって納得のいく水準の業務を提供できるほどの実力は私にはありませんし、私の性格からしても困難だからです。 困ったことに、私はどうも惚れっぽい性格の様です。それは関与先さんに対しても言える様で、感情移入しやすいという特徴があるようです。したがって、「広く薄く数をこなす」ということが、あまり得手ではありません。 そうは言っても、「ご自身の事業に対して真摯な“想い”」をお持ちの方には大抵私は共感できますので実務上はあまり問題はないのですが、以下の様な事業者さんの場合は、誠に申し訳ないことですが、「(私が)依頼を断られる」様に動くこともありえますので、その際は何卒お赦しいただきますよう、お願いいたします。ご依頼いただいても、力を発揮できそうもありませんので…。

「事業の動機に、真摯な“想い”が感じられない時、特に、『儲かりそうだから』、『流行りだから』のみと思われる場合」 「顧客の安全面への配慮軽視等、社会通念上、妥当とは感じがたい姿勢がうかがえる場合」

経営企画室業は翻訳業

つくづく思うのですが… 経営企画室の重要な仕事のひとつに、「翻訳」があるかと。 社長の考えを、ある時は「銀行語」に、また、ある時は「ベンチャーキャピタル語」に、そして、またある時は「お客様語」に…。「スタッフ語」への翻訳も大切ですね。 創造力が必要となるベンチャー企業や、感性力が重要となる美容サービス業の社長さん方には右脳の活性化が顕著の様に感じます。かたや、銀行さん等金融機関関係は、どちらかというと左脳のデジタル脳が中心かなと感じます。 となると、右脳の感性語を左脳のデジタル語に翻訳、ないしは変換しないと、何かにつけてやりづらくなります。 それを担うのが経営企画室、言わば、右脳と左脳をつなぐ脳梁なのでしょうね。 もっともっと翻訳力を向上させねば…そう思う、今日この頃です。。。

『顧客満足』軸から『快適(Good Amenity)』軸の時代へ

小冊子では、「顧客満足」軸にかわる、「快適(Good Amenity)」軸を提唱しています。快適は、“快”と“適”に分解されます。“適”は、従来の“満足”という概念がほぼ包含されていると考えても、大外れではないでしょう。問題は“快”。“快”は感情であり、“満足”は(取引上の)状態であり、両者は別次元のものであり区別すべきものであることを理解した時、自店はもっとポテンシャルを発揮できる多様な道があることに、気づくことができるでしょう。そして、その道は、規模には関係なく、というよりも、「小の方が大よりもやりやすい」(大が苦手な分野)ということにも。 ちょっと概念的なお話ですが、小冊子ではこの点、できるだけわかりやすくご説明したつもりです。

『経営企画室便り』の連載を開始します

みなさん、はじめまして。
AMM(Advanced Mission Management)代表の岡田です。

このコーナーでは、みなさんのサロンの経営企画室として、サロンの経営に役立ちそうなことや、
日々の活動の中で感じたことをお伝えしていきたいと思います。

まず、第1回目は、小冊子『サロン経営7つのホント?』について。
小冊子の概要については申し込みページの方をご覧いただければいいのですが、
自分で言うのもなんですが、美容室はじめ、エステサロン・ネイルサロン・リラクゼーションサロン等
サロン経営をなさっている事業者の皆さまには、十分お役立ちができる内容になったと思います。
本屋さんでは手に入れることはできない貴重なもの、それが無料の大盤振る舞いです(笑)。
どうぞご活用くださいませ。

尚、部数には限りがありますので、お申し込みはお早めに。。。

<小冊子『サロン経営7つのホント?』のお申し込みはこちら>